老人ホームでのレクとして行われる映画観賞会の詳細

高齢者の共同生活の場である老人ホームではメリハリのある生活環境を保つために様々なレクリエーションが行われています。中でも映画鑑賞会はテレビと再生用の機器を用意するだけで実施ができるのが利点です。老人ホームに限らず様々な高齢者介護施設で開催されていますが、利点が多い一方で注意点があることも併せて理解する必要があります。

高齢者に適したレクリエーションの方法について学びましょう。

高齢者介護施設におけるレクの重要性と注意点

レクはレクリエーションの略称であり、老人ホームなどの高齢者介護施設で使われています。レクの内容は様々ですが、そのいずれも高齢者に適度な刺激を与えるのが目的です。高齢者の多くは加齢や病気によって体力が大きく低下している他、人によっては認知症を患っていることもあります。

そのような状況で何の刺激も受けずに過ごすと不具合が著しく進んでしまい、適切なケアができません。レクを行うのは高齢者の体の衰えを遅らせ、健やかな暮らしを長く続けるための必須条件と言えるのです。その一方でレクの内容が子供のお遊戯のような代物であり、高齢者に不快感を与えてしまうケースもあることからレクの内容には十分に注意しなければいけません。

映画鑑賞会が老人ホームのレクに適している理由

老人ホームなどの高齢者介護施設で行われているレクの中でも人気が高いのが映画鑑賞会です。テレビと再生用の機器があれば実施できるので、施設の規模を問いません。また、収録されている時間が決まっていることからスケジュール管理が容易なのもレクに適している点です。

高齢者の側から見ても思い出の名作を鑑賞することで若い頃の記憶が蘇り、心地良い刺激を受けることができます。思い出話に花が咲いたり、好きな映画の新しい発見に沸き立つなど様々な楽しみ方ができます。昔の映画に限らず、最新の映画や日本未公開の映画を鑑賞することでさらに充実したひと時を過ごすことが可能です。

高齢者介護施設で暮らす日々は刺激が少なく、退屈に感じてしまう事実は否定できません。そのような日々の中で世界観や価値観が大きく異なる映画を観るのは非常に刺激的なことであり、心身の衰えを防ぐ効果があると言えます。

映画を観ることで未知の世界の存在を知り、好奇心や探究心が刺激されて若々しい感じになった高齢者も少なくありません。健やかな暮らしを営むためにも映画鑑賞は効果的と言えるのです。

利点が多い一方で注意点もある

映画鑑賞会は多くの高齢者に好まれると共に施設側にとっても便利なレクです。その反面、安易にやり過ぎると却って退屈な思いをさせてしまう可能性がある他、体にも負担をかけてしまうので注意しなければいけません。映画鑑賞会でもっとも注意すべき点はすべての高齢者が楽しめるとは限らないことです。

好き嫌いは誰にでもあり、多くの人から好意的に評価されている映画が嫌いと思う人も決して稀ではありません。嫌いな映画を何時間も観ることは非常に退屈な行為なので無理強いは禁物です。その一方で多くの高齢者が映画を楽しんでいる中でひとりだけ別室で佇むのは大きな孤独感を生む要因になることから、その点に関するケアも十分に行う必要があります。

映画鑑賞会にありがちな失敗としては何度も同じ映画を観せてしまうことが挙げられます。名作は何度観賞しても飽きないと言われていますが、それは人それぞれであることを忘れてはいけません。非の打ち所がない名作だとしても、立て続けに何度も観賞したら飽きてしまうことがあります。

その可能性を考慮せずに同じ映画ばかりを流すのはレクを行う側の怠慢と言わざるを得ません。また、映画鑑賞は基本的に上映が終わるまで同じ姿勢で続けることになります。高齢者によっては関節の痛みや床ずれなどの不具合に見舞われることがあるので健康管理には細心の注意を払うことになります。

身体機能の低下で長く集中できない人もいることから、そのような人には別の方法で楽しいひと時を過ごさせるように配慮しなければいけません。

基本的にはノンジャンルだが過度に刺激的な内容は避ける

映画の好き嫌いは個人の感性に関わる事柄です。老人ホームのレクとして行う映画鑑賞会も例外ではありません。観る人が面白いと思える映画を選ぶのが介護施設側の責任ですが、それでも個人の好みが関わってしまうのは避けられないのです。

基本的には高齢者の年代に合わせて昔の名画を選ぶことになりますが、映画鑑賞を趣味にしている人が多く入居している施設では年代やジャンルに関係無く、様々な映画の上映を行う傾向があります。ファミリー向けのほのぼのとした内容から映像作家の感性や思想が多大に織り込まれている実験的な要素が強い内容などその種類は多彩です。

映画通が唸るほどの作品を選ぶ所での鑑賞会なら誰でも飽きずに楽しめるかもしれません。しかし、老人ホームでの映画鑑賞会はあくまでも高齢者に程良い刺激をもたらすレクリエーションの一環であることを忘れてはいけません。

基本的にノンジャンルとは言え、心身が弱っている高齢者には相応しくない映画があることを踏まえて選ぶ必要があります。何の前触れも無く大きな音が発生したり、過激な暴力描写がある映画は観ている高齢者がショックを受け、体の具合が悪くなるおそれがあります。

そのため、個人の好みよりも高齢者の体調を優先するのが介護の正しいあり方と言っても過言ではありません。

映画会社が持つ権利に関する問題点

市場に出回っている映画ソフトは個人での鑑賞を目的としています。これは映画会社が持つ著作権に基づいた規制であり、市販の映画ソフトを使って営業目的の鑑賞会を行うと映画会社の権利を侵害したと見なされるのです。

厳密にいえば老人ホームで行われている映画鑑賞会も映画会社の権利を侵害していると言えますが、事実上黙認されているのが現状です。これは老人ホームにおけるレクリエーションの一環であり、営利目的の鑑賞会は言い切れないとされているためです。

お金を徴収しなくても人を呼ぶ目的での鑑賞会は営利目的と見なされますが、老人ホームで行われる映画鑑賞会は施設利用者に向けたレクリエーションであり、新規の利用者を得る行為とは異なるので営利目的に含まれないのです。

その一方で映画鑑賞会を開くことにより、本来ならお金を払って映画ソフトの購入やレンタルを行う機会が減ったのも事実です。そのため、介護施設によっては権利関係のトラブルを避けるために映画鑑賞会を行わない所もあります。

関連情報…老人ホーム探す

Posted on